音響をしている時は、いかに余計な音や不快感のある音を出さずに、心地よさを作るかを心がけます。PAには出したくないと思っている音がありますので、いくつか紹介いたします。
PAが出したくない音
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- ハウリング
- ノイズ
- ハンドリングノイズ
- 咳、くしゃみなど
- 裏方の声
- マイクを叩く音
などがあります。
ハウリング
ハウリングは、マイクにより得られた音声信号をアンプで増幅し、スピーカーから出力する際に、マイクとスピーカーの間にル―プが発生して、特定の周波数が発振してしまう現象です。「キーン」といった、耳に不快感を与える音ですので、PAは絶対にこのような音は出さないように調整します。
ノイズ
ノイズは、様々な理由で発生しますが、例えばケーブルがショート(断線)している時、電源回りの環境が悪く、アンプに負荷がかかってでるノイズ、またはワイヤレスマイクなどの電波を受信する機器に、電波が混入してでるノイズもあります。
ノイズ発生の原因と対処について、詳しくはまだ別の記事でまとめたいと思います。
ハンドリングノイズ
ハンドリングノイズは、マイクを手で持ち、ちょっと持ち方を変えたり、持ち変えたりするだけで発生するノイズで、「ゴソゴソ」という音がします。
しっかりとした金属製のフレームを用いているマイクや、構造的に対策をしているマイクは、このハンドリングノイズは出にくいですが、樹脂製の軽いマイクなどではハンドリングノイズが発生しやすい傾向にあります。
咳、くしゃみなど
マイクでお話しされている方が、咳こんでしまったり、くしゃみをしてしまうときは、なんとなく予兆が分かりますので、その瞬間マイクのレベルを下げて、大きな音で聞こえないようにしています。
裏方の声
例えば、演劇などの舞台裏や、ステージの袖で待機をしてる時でしょうか。
出演者はワイヤレスマイクを持っていたり、ピンマイクを装着していることが多いですが、いちいちマイクのスイッチのON/OFFをすることが難しいので、スイッチは入れっぱなしで、PAが手元のミキサーでON/OFFを管理します。
スイッチをONのままにしてしまいますと、舞台裏でのスタッフの声や、お客様に聞かせる必要のない独り言などが入ってしまって問題です。このようなことがないよう、出演者の出ハケをしっかりと把握して、必要な時のみマイクを生かすことが必要です。
マイクを叩く音
そして、これは本当に絶対にやってほしくない行為で、マイクが生きているかどうかを確認するのに、マイクをボンボン叩く方がいらっしゃいます。スイッチが入ったままの状態で床やテーブルの上に放り投げる方もいらっしゃいます。
マイクを叩くと機材が壊れます
マイクは音を集音する機器ですが、音の情報は電気的な信号に変換され、その後アンプという電気の信号をものすごく大きなものに増幅する機械を通して、スピーカーに接続されます。一見、マイクを叩くことなど大したことないように思われるかもしれませんが、その風圧、衝撃によって入った音が、何倍にもなってスピーカーから出力されますので、突発的な音でうるさいだけでなく、機材に深刻なダメージを与えます。
MCさんやボーカルの方は分かっていらっしゃると思いますので、まずマイクを叩かれたことはありませんが、突然の呼び出しで登壇してあいさつをすることになった方など、突然マイクを持たされた方は、PA的には注意が必要です。
私は、たいていこのようなマイクで話す方が切り替わるときは、音量をコントロールするミキサーという機材に手をかけており、出だしの声の大きさが大き過ぎないように、そして、一瞬で適正な音量レベルに持っていけるように、準備万端の姿勢で構えております。
そのため、マイクを叩きそうだな~という雰囲気は事前に察知できるため、わたしの場合は、その瞬間!スっと音を下げて、爆音がならないようにしています。
心の中では「叩いたって、無駄無駄無駄無駄ァァァ!」と思っています。
というのは冗談ですが、機材を守らなければならない使命感と、申し訳ない気持ちで複雑です。
お話しする方は、スイッチが入っているかどうか?自分の声がマイクOFFのまましゃべり始めて、恥ずかしい思いをしないか?ということで頭がいっぱいになってしまうのではないかと思います。
確かに、カラオケ用のマイクでしたら、分かりやすいところにスイッチがあり、ONになっていれば緑色などのランプが付くなど、だいたい分かりやすいと思います。
しかし、プロ用で使っているマイクは、スイッチが付いていないマイクも多いですし、ワイヤレスマイクの場合は、スイッチがどこにあるか分かりづらいと思います。
その気持ちも分かるのですが、お客様の耳を守るため、そして機材を守るためには致し方なしと考えています。
マイク叩きを防ぐために
やはりコミュニケーションが大切になってくると思います。
例えば、急にマイクを渡されたとしても、「スイッチは入っていますので、そのままお話しください」という意図を、MCさんがさりげなく後押しして伝えてくれるですとか、マイクをアテンドするスタッフさんが、さりげなく伝えてくれたりですとか、周りの人の協力を得られれば、このような不格好なシーンは防げると思います。
よく見る間違いシーン
マイクを絶対に叩いてはいけない、この基本的な事でも、一般的には認知が広がっていないと思います。それどころか、テレビやドラマで見かける演説のシーンと言えば?と聞きますと、多くの方が「えー、ゴホン!(キーーン…)、ボンボン(叩く)、テステス…」というシーンを思い浮かべるのではないでしょうか?
PA的は、ハウリングも起きているし、マイクを叩いているし、で全くもってなってない0点の使い方になります。
この記事を読んでくださった方は、ぜひ、マイクは優しく使ってください。