なぜイベントに音響が必要か?

音響のお悩み

音響の必要性

こんな風に思っている方はいませんか?

「音響って、そもそも必要?」

「音さえでれば、ラジカセでもなんでもいい」

「スマホを繋げてかけっぱにしておけば、それなりになるんじゃない?」

確かに、音が何もない場合に比べると、スマホ等からのBGMがあるだけでも雰囲気が違うことは間違いありません。

しかし、音が小さくて参加者全員に聴こえていなければ、いまひとつ盛り上がりに欠けませんでしょうか。そしてマイクを使って声をしっかりと届けたい場合はどうでしょうか。イベントのシーンごとに雰囲気を変えたくても、咄嗟に対応が可能でしょうか。

デジタル機器が普及している昨今、手軽に好きな曲をかけることは簡単なことですし、イヤホンで好きな曲を楽しむことも簡単です。しかし、それは家庭内や、小規模な空間、あるいは自分だけの空間のお話し。

ひとたび自分だけの空間から飛び出し、たくさんの人と一緒にイベントをしようとすると、手持ちの音楽デバイスでは限界があり、そこに求められる知識、技術、経験、機材のハードルは一気に上がってしまいます。

お客様が慣れない機材を使うストレス、いまいち聴きづらい音を仕方ないと我慢し続けるストレスを解消するため、専門知識を有したPA(音響)オペレーターがいるのです。

音響演出はテンションを上げる起爆剤

ビジネスマンなら、人前でプレゼンをするとき、アイスブレイク等のテクニックを使って、コミュニケーションを取りやすくすることも多いかと思います。

集まった人を和ませ、緊張をときほぐし、よい雰囲気作りをすることで、目的の達成が楽になります。

これはイベントでも同じです。

いわゆる「客入れ」と呼ばれる開始準備中の時間は、イベント本編の開始にあたり、徐々に気持ちを作り、雰囲気を高めていく大切な時間になります。

「オープニングアクト」はイベントの冒頭でしっかりと注意を惹きつけ、これから何かが始まる!という期待感を最高潮に高めることができます。

例えば、社内でイベントをするときは、業務の一環として就業時間扱いにする場合もありますし、有給を付与することで参加してもらう場合もあります。

社員は、ただの遊びではありませんので、仕事モードのまま集合することがほとんどのように見受けられます。周囲には普段あまり顔を合わせない部署の社員や、別の支部の社員もいますし、何といっても上司や役員、社長もいらっしゃるわけですから、あまりおふざけが過ぎると評価に響いてしまうのではないかと、緊張気味です。

しかし、それではイベントが始まっても会場の雰囲気がなかなか温まりません。

ガツン!とインパクトのあるオープニングを皮切りにすることで、参加者の気分を切り替え、非日常の体験が始まるという気分のスイッチがONになり、その後の進行が非常にスムーズになります。

このようなインパクト…迫力や刺激のある演出のためには、音響は欠かすことのできない要素になります。

音響は「相手へのプレゼント」の精神

快適な空間の創造

お客様には、とにかく快適な空間で楽しんでもらうこと。

これは絶対条件です。

会場全体に声や音楽を届けるためには、専門の音響機器と、それを適正に扱う音響オペレーターが必要です。

もし、マイクが常にキンキンとハウリングを起こし耳障りだったら…。

もし、司会者の声や社長のあいさつのが聞きづらかったら…。

後ろの方にいる参加者まできちんと音が届いていなければ、せっかくのお話しも頭に入ってこないので、集中力が散漫になってしまったり、気分がしらけてしまうのも無理はありません。

どのくらの音量なら、聞きやすいか?

どのように音の加工、調整をすれば耳触りがよいか?

このことを自問自答しながら、音響機材の操作をするのが、音響オペレーター。

その心構えは、大切な人にプレゼントを届けることと一緒です。

快適なコンセプトメイク

快適で居心地のよい空間とはどんなところでしょうか?

例えば、お気に入りのカフェを思い浮かべてください…。

店内は清潔で掃除が行き届いている、イスやテーブルなどがオシャレ、照明がいい雰囲気を出している、メニューの質がよい、飲み物や料理の味がよい、接客は気配りがあって感じが良い、そして雰囲気に合ったBGMが流れている。

これらが完璧であれば、居心地が悪いわけがないですよね。

イベントでも同じことが言えると思います。

考えたコンセプトを具現化させるための装飾、制作物、受付からクロークや待機場所へのスムーズな導線、分かりやすい案内、イベントのコンテンツ、スムーズな進行、そして、音楽。

これらが調和することで心地よいイベントが成り立ちます。

音は、心地よさに欠かすことができない、大切な要素になります。

音響さんは何をしているか?

音響さん(PAオペレーター)は、その会場に合わせて適切な音響プランを設計し、適宜スピーカーやマイク、その他付帯するすべての機材を取り扱い、音がきれいに聞こえるようにセッティングを行います。

ライブやコンサートでは、楽器の音を拾い、それぞれの音色がもっとも美しく聞こえるように、音を調整し、ミキシングを行って、お客様に届けます。

演劇では、決まったタイミングでBGMを効果的に流したり、効果音を出して、演出を最大限に生かすサポートをします。

その他、司会者や進行に合わせて、タイミングよくBGMを流し、その場の判断も加えながらその場の空気感・空間創りをリードしていきます。

まるでリアルタイムでテレビ番組や映画の中にいるような音の演出を付けることで、臨場感があり、本格的な雰囲気になります。

音響心理学

私たちが聴いている音は、心理的にも影響を与えます。

耳に入った瞬間、音は物理的な現象から、聴覚刺激に変換され、大脳辺縁系まで信号が伝達されます。その時の複雑な情報伝達の過程で、さまざまなトリックが引き起こされることが研究によって明らかにされてきました。

マスキング効果

イベントでは、アクセントにするためにBGMをメリハリをつけてかけることもありますが、シーンとシーンを繋ぐときや歓談中にうっすらとBGMをかけることもあります。この時、BGMの目的のひとつにマスキング効果があります。

マスキング効果とは、二種類の音が重なったときに、本当は鳴ってはいるけれども、片方がかき消されて、聞こえなくなるという現象のことです。

BGMを止めると、とたんに周囲のガヤガヤが気になることがあります。BGM自体に集中して曲の内容をしっかりと聞いてもらうことを目的とせず、周囲の騒音をカモフラージュして、空間の違和感を取り除く効果があります。

イメージ誘導効果

場の雰囲気を、曲の持つ明暗の印象や、記号化されているイメージに誘導することを指します。

例えば、病院では抑揚の少ないクラシックが、高級サロンでは落ち着いた曲が、カフェではジャズやボサノバがかかっていることが多く、私たちは社会生活を送る中で、そのような印象付けに慣れている部分があります。

楽しい演出の時には明るい曲を、そして涙を誘いたい時は悲しい曲をかけることで、今そのシーンではどんなことを表現したいのかをイメージ付けます。

この時、曲の内容に集中しないで、聴いていないつもりでいても、実は無意識のうちに人の心理を誘導することができます。

感情誘導効果

映画を観ているとき、観ているシーンに明確なきっかけがなくても、曲を聴いているだけで泣いてしまう経験をしたことはありませんか?

このような効果は感情誘導効果と呼ばれます。

喜びや不安、怒りや悲しみといった感情の変化を誘導し、しかもその反応速度が速いことが特徴です。短時間で感情に変化をもたらすことができるのは、大脳辺縁系を活性化させるためだと言われいます。大脳辺縁系は、大脳の深部に存在し、情動、意欲、記憶、自律神経、情動行動に関与します。

行動誘導効果

早いテンポの曲を聴きながら歩いていると、ついついそのペースに合わせて歩くスピードが上がることはありませんか?

あるいは、焦らせるような早い曲を聴くと、動きが早くなってくるというのも、この行動誘導効果の一例です。

人は無意識のうちに、音楽のテンポや音量の情報から想定される状況に、行動を合わせようと変化してしまうのです。この効果は、徒競走や、作業のスピードアップを図りたい時に応用されています。

音が演出に与える影響の大きさは非常に強いものですし、人の心理面に与える影響も大きいです。持込機材のあると無しではまったく聞こえ方が違いますので、是非、迫力があって聞きやすい音響を体験してみてください。

電源確保!環境を整えよう!

よい音と電源の大切さ

音響機器は当然のことですが、電気で動いています。電源が入らなければ、さすがに現場ではどうしようもありませんし、電源にトラブルが発生してしまうと、致命的です。

この電源の環境が良くないと、音にノイズが発生したり、音響機器が正しい性能を発揮しれくれない場合がありますので、良い音を出すためには電源の確保は非常に重要になります。ケーブルを高級なものに変えることも有効ですが、まずは一番の上流である電源を見直すようにしましょう。

まずは音響専用の単独回線を

イベント会場においては、まずは音響専用で使える電源を確保することが大切です。これは①キレイな環境の電源の確保と、②ブレーカーが落ちたりしない、適正な電力の確保の2つの意味があります。しかし、これは本当によくある話なのですが、使わせてもらいたい電源が「単独かどうか?」は目で見て分かるものではありませんし、会場の方もご存じでない場合が多いです。

家庭においては、なるべくタコ足配線にしないで、冷蔵庫などの家電と同じ回線にしないよう注意が必要です。

単独回線とは?

コンセントの数は多いほど便利であることはもちろんですので、部屋の様々なところにコンセントが顔を出していることでしょう。単独回線とは、ブレーカーが付いている分電盤のスイッチ(系統)のうち、1つの系統の回線を用いるということです。

これは注意が必要で、壁から見えているコンセントの一か所から電源を取るという意味ではありません。コンセントの奥、壁の中でどのような配線になっているかは、目で見るだけでは分かりませんので、どのコンセントとどのコンセントが裏でつながっているかは、図面などで確認する必要があります。

この図面はホールなどの設備でしたら持っていることがほとんどですが、体育館や公民館、レストランなどの飲食店の場合は担当の方も把握されていないことが多いです。その資料がどこにあるかもわからず、すぐに出にくいので、その場合は施工業者や保守メンテナンスで依頼をしている会社に確認を取ってもらう必要があります。問い合わせてもらうにも時間がかかりますので、余裕をもって確認をしましょう。

家庭の場合は、施工時の配電図を確認するか、管理会社に問い合わせをしてみるとよいかと思います。それでも分からなければ、1つずつブレーカーのスイッチをオフにしてみて、どことどこが繋がっているのか、自分で確かめてみるのも方法かと思います。

*ブレーカーを切る際はPCなどをつけっぱなしにしないようにご注意ください。熱が発生する家電もオフにしてから確認をしてください。

なぜ単独回線がよいのか?

電気会社から送電された電気が電柱から建物に引き込まれ、分電盤を経由して様々なコンセントに到達しているわけですが、エアコン冷蔵庫、洗濯機、テレビ、PC、掃除機、電子レンジ、インバーター式照明などの家電から発生するノイズが電気に乗っている可能性があります。最近の家電製品は機能が豊富で、「スイッチングノイズ」というものが発生してしまうものが多く、これがノイズが乗る原因になります。スイッチングノイズとは、電子回路がスイッチングを行う際に発生する高周波のノイズ(雑音)成分のことです。

そして、電力の安定化という側面も考える必要があります。よく、冷蔵庫のコンプレッサーが入った瞬間や、ホットプレートやドライヤーを使った時に、照明がチカっとなることを経験したことはありませんか?

この時、家電機器から大きな電流が流れ、電圧が一時的に下がってしまっているのです。この電圧の不安定さが音響機器に負荷を与えてしまいます。

そのため、音響用に使う電源は、家電やその他不明な機器と併用されているものを避ける必要があります。

キレイな電気を取る方法

1.コンセントの差し方

まず押さえておきたい対策として、コンセントの極性を合わせる方法を説明いたします。

コンセントの形と言えば、普通は平行に2つの穴が並んだ形状を思い浮かべるのではないでしょうか?でも実はこの2つの穴は左右で長さが違うのです。

左の長い方がマイナス(コールド/アース)で、右の短い方がプラス(ホット)と呼ばれます。このマイナスの方が、のアースを通じて電気を逃がす設計になっています。

一方、差す方の電源プラグは、よく見ると「N」のマークが刻印されているものがあります(何も書いていない場合もありますが)。このN側を長い方の穴に来るように、すべてのコンセントの向きを揃えることで、ノイズ発生のリスクを取り除くことができます。

通常、家電機器のプラグをどちら向きに差しこんでも、性能に問題ありませんが、音響機器の場合は音質に影響を及ぼす事があるのです。

なお、音響用の機器は下の図のように3芯になっているものが多いです。3芯の場合は、真ん中の丸い部分がアースになっています。このタイプでは、差し込む向きは一通りしかありませんので、2芯のように向きがバラバラになることはありません。

2.ノイズの除去の方法

次にオススメしたい対策は、ノイズフィルタ―機能付きのディストリビューター(タコ足)を使うことです。

●オススメ機材

FURMAN ( ファーマン ) / M-8X AR J 安定化電源

この機材は、電圧安定化、ノイズフィルター他、異常電圧から保護する役割などが備わっています。100Vの電圧が欲しい時、電圧が約80~120Vにブレても、100V(±5V)で安定化するように自動的に調整をしてくれます。急な電圧低下や上昇等の不安定な電源による問題から繊細な機材を守ってくれます。

また、RFI(無線周波妨害)やEMI(電磁妨害)と呼ばれるノイズを軽減してくれることで、クリアな電源が手に入ります。

3.その他

その他、舞台やホールなどでは様々なノイズの原因があり、小さな異変にも気が付けるように注意を払うことも大切ですし、機材やケーブルが原因ではなさそうな時は、電源を疑うことも忘れれてはなりません。また音響だけれではなく、照明の影響を受けていることもあります。

仕込みの時から、照明用の電源ケーブルと音響用のケーブルはなるべく遠ざけるなどの工夫も、対策の一つになります。

以上、これらの対策にご留意いただけましたら、いざ電源がおかしいかも?と思ったときに対処ができると思います。ぜひお試しください!

叩いたって無駄無駄ァァァ

音響をしている時は、いかに余計な音や不快感のある音を出さずに、心地よさを作るかを心がけます。PAには出したくないと思っている音がありますので、いくつか紹介いたします。

PAが出したくない音

    • ハウリング
    • ノイズ
    • ハンドリングノイズ
    • 咳、くしゃみなど
    • 裏方の声
    • マイクを叩く音

などがあります。

ハウリング

ハウリングは、マイクにより得られた音声信号をアンプで増幅し、スピーカーから出力する際に、マイクとスピーカーの間にル―プが発生して、特定の周波数が発振してしまう現象です。「キーン」といった、耳に不快感を与える音ですので、PAは絶対にこのような音は出さないように調整します。

ノイズ

ノイズは、様々な理由で発生しますが、例えばケーブルがショート(断線)している時、電源回りの環境が悪く、アンプに負荷がかかってでるノイズ、またはワイヤレスマイクなどの電波を受信する機器に、電波が混入してでるノイズもあります。

ノイズ発生の原因と対処について、詳しくはまだ別の記事でまとめたいと思います。

ハンドリングノイズ

ハンドリングノイズは、マイクを手で持ち、ちょっと持ち方を変えたり、持ち変えたりするだけで発生するノイズで、「ゴソゴソ」という音がします。

しっかりとした金属製のフレームを用いているマイクや、構造的に対策をしているマイクは、このハンドリングノイズは出にくいですが、樹脂製の軽いマイクなどではハンドリングノイズが発生しやすい傾向にあります。

咳、くしゃみなど

マイクでお話しされている方が、咳こんでしまったり、くしゃみをしてしまうときは、なんとなく予兆が分かりますので、その瞬間マイクのレベルを下げて、大きな音で聞こえないようにしています。

裏方の声

例えば、演劇などの舞台裏や、ステージの袖で待機をしてる時でしょうか。

出演者はワイヤレスマイクを持っていたり、ピンマイクを装着していることが多いですが、いちいちマイクのスイッチのON/OFFをすることが難しいので、スイッチは入れっぱなしで、PAが手元のミキサーでON/OFFを管理します。

スイッチをONのままにしてしまいますと、舞台裏でのスタッフの声や、お客様に聞かせる必要のない独り言などが入ってしまって問題です。このようなことがないよう、出演者の出ハケをしっかりと把握して、必要な時のみマイクを生かすことが必要です。

マイクを叩く音

そして、これは本当に絶対にやってほしくない行為で、マイクが生きているかどうかを確認するのに、マイクをボンボン叩く方がいらっしゃいます。スイッチが入ったままの状態で床やテーブルの上に放り投げる方もいらっしゃいます。

マイクを叩くと機材が壊れます

マイクは音を集音する機器ですが、音の情報は電気的な信号に変換され、その後アンプという電気の信号をものすごく大きなものに増幅する機械を通して、スピーカーに接続されます。一見、マイクを叩くことなど大したことないように思われるかもしれませんが、その風圧、衝撃によって入った音が、何倍にもなってスピーカーから出力されますので、突発的な音でうるさいだけでなく、機材に深刻なダメージを与えます。

MCさんやボーカルの方は分かっていらっしゃると思いますので、まずマイクを叩かれたことはありませんが、突然の呼び出しで登壇してあいさつをすることになった方など、突然マイクを持たされた方は、PA的には注意が必要です。

私は、たいていこのようなマイクで話す方が切り替わるときは、音量をコントロールするミキサーという機材に手をかけており、出だしの声の大きさが大き過ぎないように、そして、一瞬で適正な音量レベルに持っていけるように、準備万端の姿勢で構えております。

そのため、マイクを叩きそうだな~という雰囲気は事前に察知できるため、わたしの場合は、その瞬間!スっと音を下げて、爆音がならないようにしています。

心の中では「叩いたって、無駄無駄無駄無駄ァァァ!」と思っています。

というのは冗談ですが、機材を守らなければならない使命感と、申し訳ない気持ちで複雑です。

お話しする方は、スイッチが入っているかどうか?自分の声がマイクOFFのまましゃべり始めて、恥ずかしい思いをしないか?ということで頭がいっぱいになってしまうのではないかと思います。

確かに、カラオケ用のマイクでしたら、分かりやすいところにスイッチがあり、ONになっていれば緑色などのランプが付くなど、だいたい分かりやすいと思います。

しかし、プロ用で使っているマイクは、スイッチが付いていないマイクも多いですし、ワイヤレスマイクの場合は、スイッチがどこにあるか分かりづらいと思います。

その気持ちも分かるのですが、お客様の耳を守るため、そして機材を守るためには致し方なしと考えています。

マイク叩きを防ぐために

やはりコミュニケーションが大切になってくると思います。

例えば、急にマイクを渡されたとしても、「スイッチは入っていますので、そのままお話しください」という意図を、MCさんがさりげなく後押しして伝えてくれるですとか、マイクをアテンドするスタッフさんが、さりげなく伝えてくれたりですとか、周りの人の協力を得られれば、このような不格好なシーンは防げると思います。

よく見る間違いシーン

マイクを絶対に叩いてはいけない、この基本的な事でも、一般的には認知が広がっていないと思います。それどころか、テレビやドラマで見かける演説のシーンと言えば?と聞きますと、多くの方が「えー、ゴホン!(キーーン…)、ボンボン(叩く)、テステス…」というシーンを思い浮かべるのではないでしょうか?

PA的は、ハウリングも起きているし、マイクを叩いているし、で全くもってなってない0点の使い方になります。

この記事を読んでくださった方は、ぜひ、マイクは優しく使ってください。

ワンツーチェックって何?

チェックワンツー

私がマイクを手にして、まず発する言葉は、

「ヘイ ヘイ ヘイ…、チェック! ワンツー、ワンツー、ツッ!ツェー、チェッ、チェッ、ハロー、ロー ロー…、ハッ、ハッ! ヘイ ヘイ…」

です。

別に頭がおかしくなっている訳ではございません。言い方はそれぞれ差がありますが、PAさんなら必ず発する言葉です。皆さんも、ライブのセッティング中や、イベントの準備中に耳にしたことがあるのではないでしょうか?

この謎の呪文のような言葉は一体なぜ、このような言葉をしゃべる必要があるのか?なんの目的でやっているのか?

不思議に思っている方もいらっしゃるかと思いますので、今回は「ワンツーチェック」について説明します。

何をしているのか?

PAはスピーカーなどの機材の設営が終わったら、サウンドチェックに入ります。

予め機材がセッティングされている会場やライブ会場などは、回線のチェックなどをして機材の状況をまず把握した後に、サウンドチェックをします。

音が適切に、心地よく聞こえるようにするためには、スピーカーやマイクの位置の調整やEQ(イコライザー)という機器・機能を使って、音質をチューニングすることで、低い音から高い音まで均一に聞こえる状態に持っていきます。

また、適切な音量がでるようにするために、音を大きくしていっても問題がないか、あるいは余計な音の成分をカットしながら、大きな音がでるように音を「稼ぐ」作業をしています。

特にハウリングが起きないようにするために、どの音の成分が悪さをしているのか特定し、カットする作業を入念に行います。

マイクを使う人が変われば、その声の持ち主によってまたハウリングのポイントが変わってきますので、個別の調整も必要ですが、準備の段階では予めハウリングが起こりづらい状況を作っておきます。

この作業は毎回現場ごとに必要で、会場や、スピーカー、マイクなどの機材が変わると、チューニングも毎回変わってきます。

このチェックを行うために、実際に自分でマイクを使って声を出してみて確認するのですが、その時に使える万能の言葉が「チェックワンツ―」なのです。

なぜチェックワンツーと言うのか?

この「チェックワンツ―」という音には広く色々な周波数が含まれています。この言葉の順番に説明しますと、

「チェック」という部分4kHz~8kHz辺りの成分が含まれています。

そして「ワン」の部分は、は低い音で、周波数は100Hz〜200Hz辺りの成分が含まれています。

続いて「ツー」の部分は高い音で、周波数は2kHz〜8kHz辺りです。

ここから派生して、「ハッ、ハッ!」と勢いのある声を出して、突発的に大きな音が入ったときに音が割れないかをチェックしたり、「チェッ、チェッ」や「ツー、ツー」などを繰り返して、高くて固い印象の音が耳にうるさく聞こえないかをチェックします。

さらに「ヘイ、ヘイ、ヘイ…」「ロー、ロゥ…」などの声を、高さを変えながら発音し、高い音から低い音までを聴きながら、一通り音のバランスを取っていきます。

実際に音の成分をみてみよう!

それでは、ワンツーチェックをする時に発音する音には、どのような周波数が含まれているのか、実際に見てみましょう。

次の図は、マイクを使って私のワンツーチェックの声を録音たのです。ノンイコライザーで直録りして、スペクトラムアナライザーという機能で波形データにしたものです。

(参考)使用機器 マイク SHURE SM58、ソフト Steinberg Cubase

「チェック」の発音に含まれる周波数
「ワン」の発音に含まれる周波数
「ツー」の発音に含まれる周波数。実際には「つうぅぅぅ~」と長めに言っています。

その他の発音も見てみましょう!

勢いよく「ハッ!」
「ツッ!!」
「へぇ~い」
「はろぉぉ~う」

しつこくてスミマセン

ワンツーチェックは世界共通ですし、しっかりとサウンドチェックをするためにとても大切なことです。

PAさんは人によって言い方に差はありますので、違いを聴いてみるのも面白いかもしれませんね。淡々と発音するPAさんもいらっしゃいますし、語尾をかなりねちっこく発音するか方もいます。私はどちらかというと、少々粘り気がある方かもしれません。

ただ、、、このチェックは繰り返し繰り返し、ある程度の時間をかけて行いますので、しつこくてスミマセン!と思います。お客様に向かっているスピーカーのチェックから、モニター用のスピーカーの一つ一つまで行いますので、どうしても何度も繰り返してしまうのです。

それもすべて、良い音にするため、本番で成功をさせるためですので、ご容赦いただければと思います。

必ず知っておくべきマイクの正しい持ち方

マイクの持ち方

よく見る間違ったマイクの持ち方

よくビジュアル系のアーティストがマイクの頭の部分を覆うようにマイクを持ったり、ラッパーがマイクの先端を斜め上の方に向けちゃったりしている姿を目にしませんでしょうか?

あれはパフォーマンス的にはご自由にやっていただければと思いますが、PA的な立場から申しますと、即刻でやめていただきたい間違ったマイクの持ち方なんです。

そんな小生も若かりし頃はビジュアル系バンドにガッツリとはまり、このような歌い方を当たり前のように目にしておりましたので、ただ単純にカッコイイな、と思っておりました。

しかし、良い音のためには、マイクの性質を理解して正しく持つことが大切です。ここでは、これを知っておけば損はない、正しいマイクの持ち方と、間違った持ち方はなぜいけないのかを解説していきます。

マイクには穴が開いている?

まずはマイクの基本的な構造について解説いたします。

一般的に、カラオケやセミナー会場、ボーカル用のマイクは「単一指向性マイク」と呼ばれているもので、おそらく多くの方が普段目にしていることでしょう。

マイクには、どの方向からの音をよく拾うか?によっていくつかのタイプに分かれており、無指向性マイクや、双指向性マイクといったものも存在します。

ここでは、単一指向性マイクについて詳しく説明いたします。

単一指向性マイクの構造

単一指向性マイクは、正面から入る音を集音するような構造になっています。

音はマイクに対していろいろな方向から入ってきますが、では、後ろの方から来る音はどうなっているでしょうか?

ここにポイントがあるのですが、後ろから来る音をカットして、前方の音のみを拾っているのではなく、後ろから来る音はキャンセルして打ち消すような仕組みになっているのです。

どういうことかと言いますと、下の図で説明いたします。

マイクの振動板

マイクには「振動板」という板があり、ここで、声などの音、つまり空気の振動をキャッチして、それを電気的な信号に変換します。

正面から来る音は、そのまま振動板に伝わります。

しかし、後方から来る音は、マイクのヘッド部分にあるグリルと呼ばれている網上の穴を通り抜け、さらにマイクの後側面に空いている、空気穴からも音の振動が伝わってきます。

マイクには、空気の流れる穴が開いているんですね!

これは皆さんご存じでしたでしょうか。

そして、マイクの構造の面白いところは、後ろから来た音は、空気穴を通過するルートと、マイクのグリルを回り込んで前からも入ってきます。

そこで、後ろから来る音のスピードを調整して、前から回り込んでくる音と振動板に到達するタイミングを合わせるようにしてあり、前と後ろの両方向から同時に振動板に到着するようになっています。

そうすると、振動板は、プラス方向の動きとマイナス方向の動きが相殺、つまりキャンセルされて、振動板が振動しないことになるのです。

このような仕組みで、後ろから来る音はキャンセルしつつ、前からの音はそのまま拾うことで、単一指向性という方向性を持たせることができるわけです。

マイクのヘッドを握ることの4つの弊害

その1:余計な音を拾ってしまう

ここまで単一指向性のマイクの構造について触れてきました。それでは、マイクのヘッド部分を覆いかぶせるように握ってしまう持ち方をするとき、マイクにはどのようなことが起きているのでしょう?

マイクのヘッド部分を覆ってしまうということは、マイクの後方から入ってくる音のキャンセル機能が働かなるということです。

そうすると、本体はマイクの前方の音に集中して拾いたかったものが、周囲の音も拾い始めてしまうことになりますので、会場の騒音であったり、バンドの場合はギターやベース、ドラムなどの他のパートの音も入り込みやすくなってしまうのです。

その2:音質が悪くなる

マイクのヘッド部分を覆ってしまうと、音がモコモコとこもった音になります。

ボーカルの場合は、主役としてクリアな音を他の楽器にも負けないようにしっかりと聴かせたいところです。しかし、せっかくの声がモコモコになってしまうと、いまいち輪郭の不明瞭な音質になってしまいます。

このとき、PAとしての私はモコモコした音質を補正するために、EQ(イコライザー)という機材を使って、少しでも聞きやすくなるよう音質の補正に取り掛かります。本来であらば削らなくても済む声の成分を削ってしまうと、本体の声の持ち味が失われて、芯の弱い声になってしまいます(もちろん、極端に声質が変わらないように、最大限努力をして補正していくのがPAなのですが。)

その3:モニターが聞こえにくくなる

ボーカルがマイクを覆って握ってしまうと、前述のようにPAとしては音の補正をせざるを得ません。そうすると、ボーカルの方にとっては、普段聞きなれている自分の声とは少し違って、芯がなく、音が小さく聞こえてしまいます。

ボーカルなどのプレーヤーには、自分の音を聞くためのスピーカーとして、モニタースピーカーを設置します。会場のお客様に向けて聴かせるものとは別の用途になります。このモニターの音を聴きながら自分たちの演奏をしていくのですが、この音が小さいと、歌や演奏が非常にやりにくくなります。

PA的には、余計な音をEQでカットする → ボーカルが音をもっと欲しがり、ますますマイクに覆いかぶさる → 余計な音が増える の負のスパイラルに陥ります。

その4:ハウリングを起こしやすくなる

ハウリングは、キーンと耳が痛くなるような音で、マイクからの音の入力と、スピーカーからの音の出力がループしてしまうときに発生します。前述の負のループが発生してしまうと、ボーカルはモニターの音をもっと欲しがってしまいます。

ここで単一指向性マイクの特徴をもう一度思い出していただきたいのですが、本来、マイクの後ろ(今の話で言いますと、モニタースピーカーから音が鳴る方向)から来る音は、キャンセルされるはずです。しかし、マイクを覆ってしまうとその機能が働かなくなってしまいますので、モニタースピーカーから出た音が、より一層マイクに入り込みやすくなり、その結果、信号のループが発生し、ハウリングが起こりやすくなります。

もちろんPAは、この負のスパイラルに陥らないように、あの手この手で対策、対応をしますが、極端に言いますと、マイクの持ち方ひとつで、このような弊害が発生し得るということです。

正しいマイクの持ち方はこう!

まずは画像で、良いマイクの持ち方の例を示します。

このように、マイクのヘッド部分を覆い隠さず、マイクのグリップ(柄の部分)を持つのが、正しい持ち方です。

マイクの正しい持ち方は、マイクとの適切な距離と角度をとることも大切です。

マイクとの適切な距離と角度

ここで、私にお気に入りのマイクメーカー、SHUREのHPより、マイクの距離と位置について説明がありましたので、引用させていただきます。

「一般的な用途と配置方法が以下の表に記載されています。マイクロホン技術は個人の嗜好に大きく依存しており、「正しい」マイクロホンの位置があるわけではないので、この点にご留意ください。」という注釈が添えられていますが、マイクの配置と音質の関係がまとめられています。

以上、マイクの正しい持ち方をご紹介いたしました。

これで、今度から、カラオケ、会社のプレゼン、セミナー、司会などの出番があるときは、正しくマイクが持てますね!

次世代音響「バーチャルPA」始動!

「バーチャルPA」とは

PA(音響)のノウハウを活かしたオペレーションを、

インターネットを介して、遠隔で提供するサービスです。

新型コロナウイルス感染症によって、私たちは未曾有の危機に直面しています。

経済状況がいつ回復するかは、見通しがつかないですが、

それでも誰かの役に立つサービスを考えるのに、停滞はしていられません。

ZOOMなどを利用したWEB会議、オンライン会議も徐々に増えつつあるように思いますし、ネット上で様々な工夫を凝らした、オンラインセミナー、レッスンなども見かけるようになりました。

これから新しい形のネット配信、コンテンツがもっと増えてくることでしょう。

これまで当たり前のようにあった、人が実際に集まるイベント。

このイベントの在り方も変化していくかもしれません。

そこで、始めたのが「バーチャルPA」サービスです。

これは、ネットを駆使して、従来の常識では考えられなかった、

新しいイベント形です。

具体的には、

●Web会議ツールを活用したPA演出の配信

●バーチャルライブのオペレーション

●イベント会場の音響設備をリモートでコントロール

を主軸にサービスを展開していきます。

音響の可能性は無限大!!