お客様からのご質問で非常に多いのが、ワイヤレスマイクに関するお話です。周波数帯の種類によって、メリット・デメリットがありますので、お客様が現場で必要とされる、目的・本数・現場環境に最適なプランを考えなければなりません。同時に使用できる本数にも制限があります。
ここでは、ワイヤレスマイクの種類と特徴、そして選び方について簡単にまとめました。
ワイヤレスマイクの周波数の種類
ワイヤレスマイクには、使用する電波の周波数帯によって、種類が分かれています。従来は、A型、B型、C型と呼ばれておりました。
昨今では電波法改正に伴い、日本で使用できる電波の周波数帯が再構築されました。
現在では、B型、C型、ホワイトスペース帯、1.2GHz帯、2.4GHz帯の種類があります。
免許が必要な電波がある
上述の周波数をもつワイヤレスマイクを、誰もがいつでも使えるかというと、そうではありません。使用にあたり、免許が必要なものと不要なものがあるんです。
限りある電波の帯域の中では、携帯電話事業者や、地上デジタル放送などでも電波を利用します。誰もがフリーで電波を使うと、混線などのトラブルが発生し大変なことになります。
そこで、電波の適正利用のために整備されたのが電波法であり、利用区分、料金、運用、監視体制などが規定されています。
ワイヤレスマイクの特徴とメリット・デメリット
上の図の左側から説明いたします。
C型
300MHz帯を使用し、免許は必要ありません。電波が飛びやすいというメリットはありますが、一方で音質は期待できず、音楽用には向いていません。簡易的なスピーチ用のワイヤレスマイクや、無線機などで用いられます。
ホワイトスペース帯
470~714MHzの周波数帯で、この電波の使用には免許が必要です。「特定ラジオマイク」と呼ばれることもあります。免許の取得や申請の手続きに手間がかかることはデメリットですが、その代わりに混信する可能性が少ないことがメリットです。
音声、楽器音等を高品質に伝送することを目的としているため、音質は良いです。 弊社では、イベントやホール、ドームなどの大型イベントで使用することが多いです。
B型
B型(B帯)は、806~810MHzの周波数帯を使用します。こちらはも免許は必要ありませんので、手軽に使える点はメリットです。
しかし、混線しやすいこと、同一エリア内で最大で6本までしか使えない点はデメリットです。使用現場の近隣でB帯のワイヤレスマイクが使われていれば、混線したり、プツプツと音が途切れることがあります。都内の駅チカの建物も混線がしやすくて、B帯を使うときは冷や冷やしてしまいます。ホテルの式場のように、一つの建物で部屋ごとにB帯のワイヤレスマイクを使っている建物では、持ち込む際は予め会場側との使用チャンネルの確認が必要になります。混線しやすいということは、同時に自分の音が周囲にも混成させやすいことにもなりますので、迷惑をかけてしまうことがないように注意が必要です。
電波の混線が見られるときは、チャンネルを変更したり、電波の感度を調整したり、あるいは指向性の高いアンテナなどを用いて調整をしています。
機種によっては、同一エリア内でのマイクの同時使用本数が3本や、4本のものもありますので、本数がたくさん必要な時は有線のマイクと組み合わせたり、後述する2.4GHz帯のワイヤレスマイクを組み合わせたりします。
1.2GHz帯
「特定ラジオマイク」として制定された周波数帯で、こちらは免許が必要です。
使用場所の影響を受けにくい帯域のため、混線のリスクを避けたいときにお勧めのタイプです。
2.4GHz帯
免許の必要がなく、誰でも手軽に使用できます。また、A帯やB帯との干渉がありませんので、同時に使用しても問題ありません。同一エリア内で10波以上使用できる点はメリットです。ライブハウスなどで、アイドルなど人数が多いグループでは2.4GHzのワイヤレスを使っているのをよく見かけます。
ただ、この2.4GHz帯はWiFiやBluetoothと同じ周波数帯なのです。そのため、近くでWiFiをたくさん使っている環境があると、電波の受けが悪くなります。
加えて、この周波数帯の電波は遮蔽物に弱いため、マイクのレシーバーとトランスミッター(親機と子機のような関係)の間に物理的に遮られるものがあると、これも電波の受けが悪くなる要因です。
・リハーサル時は問題なかったけど、実際にお客様が入ると電波が途切れやすくなった
・近くでドローンを飛ばされると電波が急に途切れた。
などは現場あるあるです(´;ω;`)ウゥゥ
さらに、子ども達が集まるイベントでは、ゲーム機のすれ違い通信でも影響を受けてしまうことがあるようです。
周囲の環境には気を付けなければならない要因がたくさんありすぎて、警戒に眼がギラギラしてしまいそうですね。PAはいつもこういう事にも神経を使っています。
免許が必要なマイクは、使用者も免許が必要なの?
いいえ!大丈夫です。
これまでワイヤレスマイクの使用に免許が必要なタイプと、そうではないタイプがあることを説明いたしましたが、そもそも免許は誰が、誰からもらうものなのでしょうか?
ここでは簡単に免許のことについて触れてみたいと思います。
特定ラジオマイク運用調整機構(特ラ機構)
免許な必要なワイヤレスマイク(特定ラジオマイク)を使用する場合は、「一般社団法人特定ラジオマイク運用調整機構」に入会し、手続きをすることが必要です。(*特ラ機構と略されます)
次に、無線局(特定ラジオマイク)免許を取得します。 無線局免許の申請には、所定のフォーマットの申請書類と、特ラ機構の加入証明書が必要になり、総務省に申請します。審査が無事に通過しましたら、無線局免許が交付されます。
特ラ機構への入会は、対象となるワイヤレスマイクを購入した事業者が入会をします。一般のユーザーが音響会社などからワイヤレスマイクをレンタルした場合は、ユーザーの代わりに音響会社が特ラ機構に対して、使用の申請を出してくれます。
特ラ機構は何をしてくれているかと言いますと、テレビ中継やライブ、コンサートなどで電波が混線しないように「いつ」「どこで」「誰が」特定ラジオマイクを使っているのかを一元管理し、運用の調整をしてくれているのです。
もし事前に、使用場所や時間が被ってしまった場合は、使用する周波数のすり合わせをして、トラブルを回避することができます。
オススメのワイヤレスマイクは?
SHUREのULD-Xは1.2GHz帯のワイヤレスマイクです。音質が非常にクリアであり、電波の受信状態も安定しています。
そして、2.4GHz帯でオススメなのは、こちら!
2.4GHz帯のワイヤレスマイクといえば、LINE6が主流でしょう。
2.4GHz帯は周囲の環境に非常に気を遣わなければなりませんが、状況をよく確認して、適切に調整をすれば、恐れるものではありません!
5G時代に向けて…
ワイヤレスマイクの使用については、電波法による制約があったり、使用が面倒が側面もあるかもしれません。しかし、電波法改正に至った背景としては、これからの5G(第5世代移動通信シス テム)到来に向けて、迅速かつ円滑な普及、あらゆる社会経済活動の基盤となる電波の有効利用の促進が目的となっております。
例えば、将来のAIカーでは、前後の障害物だけを認識するだけではなく、建物の陰に隠れている人も認識できるようになり、飛び出しによる交通事故を未然に防げるようになるかもしれません。
これも5G時代のインフラ整備と、電波の整備があってこその話だと思います。
新しい時代の到来がワクワクしますね!
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